「安保法制」の撤回・廃案を求める意見書が可決

宇治市議会は、7月3日の本会議で、「安保法制」の撤回・廃止をもとめる意見書を採決、共産、民主、無会派など16人の賛成と、自民・公明の11人の反対、賛成多数で可決採択しました。

意見書(第6号)「 安保法案の撤回・廃案を求める意見書」

意見書の採決にあたって宮本繁夫議員が賛成討論を行いました。

    意見書案第6号「安保法案」の撤回・廃案を求める意見書案に賛成の討論

自公の安倍政権が今国会での成立を狙う安全保障関連法案は、日本を「海外で戦争する国」につくりかえる、「戦争法案」に他ならないことが、国会での審議を通じて、一層鮮明になってきています。

安倍首相は「国民の命と平和な暮らしを守る」ためのものだなどと言いますが、法案はすべて、自衛隊の役割を拡大して、海外派兵や米軍の支援にあてるためのものです。地理的制限もなく、地球上どこでも派兵し、米軍のあらゆる戦争に参加します。戦闘地域で活動して自衛隊が攻撃される危険があります。武器を使用して殺傷行為をおこなう危険も高く、日本が「殺し、殺される」道に入る危険が飛躍的に高まります。「二度と海外で戦争しない」と誓った憲法の平和原則を根本から破壊し、日本を米国ともに「海外で戦争する国」につくり変えるものです。「平和安全法制」どころか「戦争法案」そのものであります。

安倍首相は「我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している」とし、我が国の安全を確保していくには、日米間の安全保障・防衛協力を強化するとともに、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法整備が必要だ。これにより抑止力を高めることが必要だとしています。つまり米軍とともに戦争する準備を強化することだとしています。 総務委員会での請願審査で自民党委員は、「フリピンの米軍基地がなくなり、軍事的力関係が変わったため、中国は南沙諸島を埋め立てて領土の拡大をしている」「日本が日米同盟があるので日本の安全が守られている」などと発言していましたが、米国の要求で軍事力を強化すればするほど相手も軍事力を強化し、とどめない軍拡競争に陥ります。これでは一触即発の緊張が高まるばかりであります。軍事予算も膨張し、国民生活は圧迫されることは必至です。 外交で戦争をさける仕組みをつくり、緊張を緩和する努力こそ大事で確かな「抑止力」であります。

また、安倍首相は自衛隊の行動には「厳格な歯止めがある」と言って います。安倍首相の歯止めとは、集団的自衛権を行使するにあたって政府がつくった「新3要件」、つまり「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」などの要件を厳格にするとしています。 しかし、この曖昧な要件に該当するかどうかの判断は、時の政府であります。

安倍首相は、日本以外の国への武力攻撃で、日本国内が「生活物資の不足や電力不足によるライフラインの途絶」などの状態になった時もあてはまる、と答弁しています。 具体的には日本から遠く離れたホルムズ海峡が機雷封鎖された場合などをあげています。政府は、中東からの原油の輸入ができなくなってた場合に備えて、3月末現在で197日分の備蓄をしていますが、原油の輸入が途絶えたら我が国の存立が脅かされるかのようなことを言っています。まさに首相の判断次第としています。

かつて日本は、「満蒙は我が国の生命線」と言って、柳条湖事件を起こし、満州事変から日中戦争、アジア太平洋戦争へと15年戦争へ拡大して行きました。 また、アメリカが国際法上違法な先制攻撃を始めた場合でも、安倍首相は「新3要件を満たすことになるかは、個別具体的な状況に照らし、総合的に判断される」と言うだけで、侵略戦争への参加を否定していません。 また、どんな場合が存立危機事態なのかと問われ、安倍首相は、「どういうことでなければ武力を行使をしないのか・・・・を一々全て述べている海外のリーダーはいない」などと答弁を拒否しました。時の政府に白紙で委ねようというものです。

6月4日の衆議院の憲法審査会では、与党も含めて合意し参考人とし て招致された憲法学者3氏がそろって、集団的自衛権行使を可能にする戦争法案について「憲法に違反する」との認識を表明しました。

そして6月22日、戦争法案を審議している衆議院の安全保障法制特別委員会に参考人として出席した元内閣法制局長官の宮崎礼壹(れいいち)氏は、集団的自衛権の行使が憲法9条のもとで許されないという見解の積み上げは40数年に達し、これを覆す法案を国会に提出するのは「法的安定性を政府自ら破壊するものだ」と批判し、政府が歯止めとする新3要件についても、ホルムズ海峡の機雷封鎖や米軍の存在がわが国の死活的利益だとする大臣答弁をみれば「なんら歯止めになっていないことは明らかだ」と強調しています。「集団的自衛権の行使容認は、限定的と称するものも含めて従来の政府見解とは相いれない。これを内容とする今回の法案部分は憲法9条に違反し、すみやかに撤回されるべきだ」と主張しました。

また、同じく元法制局長官の阪田雅裕氏も、「本当に集団的自衛権が限定されているか」として、ホルムズ海峡の機雷封鎖をはじめ「中東有事にまで出番があるとすると、到底従来の枠内とはいえない」として法案に対する強い違憲の疑いを示しています。
7月1日の安保法制特別委員会では、2004~09年に官邸でイラク、インド洋派兵などの実務を担った元内閣官房副長官補の柳沢協二氏が、集団的自衛権行使の要件となる「存立危機事態」について「概念自体に無理がある」と指摘し、憲法解釈変更の根幹をなす概念が成り立たないと批判しました。

このように、これまで政府の中枢にいた方々からも「戦争法案」の違憲性が、厳しく指摘されています。

戦争法案について、半数以上の人が「憲法違反」と答える世論調査が相次いでいます。 6月21日付の「共同」では、「憲法違反と思う」56・7%、「憲法違反とは思わない」29・2%となっています。6月23日付の「朝日」では、憲法学者の「憲法違反」との主張を「支持する」50%、これに反論する安倍政権の主張を「支持する」17%です。6月29日付の「日経」では、「憲法に違反している」56%、「違反していない」22%です。6月30日付の「産経」では、違憲57・7%、合憲21・7%です。

政府が提出している法案を「憲法違反」と考える人がこれ だけ多くを占めるのは異例の事態です。法案を「合憲」と強弁する安倍政権は国民の中で孤立しています。

今国会での成立に反対の人はいずれも約6割に上ります。今国会での強行が許されないのはもちろん、国民多数が「違憲」と考える法案は直ちに廃案にする以外にありません。

以上、「安保法案」の撤回・廃案を求める意見書案に対する賛成の討論とします。

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